横文字で馴染みのない言葉が突如登場しニュースの中心になっています。
カーボンニュートラルってなんでしょう?
地球温暖化問題が叫ばれはじめてかなりの年数が経ちました。
2015年に第21回気候変動枠組条約締結国会議がパリで開催され、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定、いわゆるパリ協定が採択されました。
パリ協定では1600年の産業革命前と比べた世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑える。
さらに「1.5度未満」を目指すことを目標に、各国の削減目標の作成・提出・維持する義務を課していることが特徴です。
ご存知アメリカでは自国第一主義を掲げたトランプ前大統領がパリ協定から離脱しましたが、バイデン現大統領がパリ協定に復帰し気候変動の抑制は再び注目を集めているのです。
その気候変動の最大の原因は二酸化炭素に代表される温室効果ガスです。
日本は年間12億トンを超える温室効果ガスを排出しており、世界第5位の排出国です。
この温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにすると菅総理が宣言しました。
これがカーボンニュートラルなのです。
既にアメリカはじめEUやイギリスなどは2050年までにカーボンニュートラルを宣言しています。
中国も2060年までにカーボンニュートラルを宣言済みですが、日本同様今後世界から2050年への繰り上げを求められるでしょう。
日本では300を超える地方公共団体も2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取組むゼロカーボンシティを表明し、人口規模では既に1億人を超えています。
地元茨城県境町ももちろん既に表明済みです。
温室効果ガスはどのような時に発生するのでしょう?
温室効果ガスの9割以上は二酸化炭素に由来します。
内訳は工場などの産業部門、輸送などの運輸部門、オフィスや家庭の民生部門に大きくは分類されます。
私達の家庭からも二酸化炭素は発生しています。
最近では省エネ性能に優れたテレビやエアコン、冷蔵庫などが多数開発されています。
しかし、テレビやDVDプレイヤー、パソコン、スマートフォン、温水洗浄便座、空気清浄機など家庭内での保有台数が増える事に伴って二酸化炭素の発生が増えています。
こまめにスイッチを切るなど、私達もできる対応をして行きましょう。
また、脱炭素の生活様式に転換する事も私達のできることです。
なるべくマイカーではなく電車や自転車を利用する。
冷房暖房を効かせすぎない。
購入時には省エネの家電を選ぶ。
電球をLED化する。・・・
カーボンニュートラルのカギは私達の環境意識そのものでもあり、地球の未来への責任でもあります。
米国のあるコンサルティング会社のリポートでは、人が消費する肉は、2040年には牛肉や豚肉や鶏肉などの動物から得た肉が40%になり、大豆に代表される植物肉と細胞培養した肉が60%を占めると予測しました。
今から19年後の未来の肉について考えてみましょう
そもそもなぜ肉は植物肉や培養肉などの代替肉に置き換わって行くのでしょう?
それは既存の食肉生産方法が限界に来ているからです。
牛や豚や鶏の餌はトウモロコシや大豆などの穀物です。
現在世界の穀物収穫量の37%は人間が直接摂取していますが、それを超える46%が畜産の飼料として消費されています。
しかし、気候変動や地球温暖化が原因となり穀物の収穫量は増えていないのが現状です。
一方、世界人口は70億人を超え増加中で2100年に109億人となると国連が予測し、人間が直接摂取する穀物を増やさなければならないという事情もあります。
また、変換効率の悪さも以前から指摘されています。
例えば牛肉は1kgを作るのに15kgの穀物原料が必要とされ、その変換効率は7%です。
一方培養肉は大豆、豆、コーンなどの穀物原料から作られる培養液1.5kgで1kgの肉を作れるとされ、変換効率は実に75%にもなります。
さらに、畜産による環境汚染も深刻です。牛から出るげっぷや糞尿からのメタンガスは二酸化炭素の25倍の温室効果をもたらします。
世界的なカーボンニュートラルの議論に畜産が組み込まれてもおかしくはないと言う専門家もいます。
これまでもベジタリアン食やビーガン食などがありましたが、その風味から一般的に受けが悪くニッチなマーケットとなって来ました。
しかし、最近の植物肉は本物の肉に近い風味を再現するのに成功し、アメリカのビヨンドミート社やインポッシブル社の植物肉を大手ハンバーガーチェーンやレストランチェーンが扱いを増やしています。
さらにその先は培養肉へ移行して行くと考えられています。
培養肉は動物細胞を培養液で培養する方法ですが、培養液のコストダウンにはもう少し時間がかかる模様です。
培養肉を作る技術は乳、卵、魚肉も作れるため、いずれ食品市場全体に波及して行くと考えられています。
しかしながら、結局は食べ物ですからその安全性と健康、倫理観などが重視されることでしょう。
どれだけ進化をしても生物をいただくことに対する畏敬の念は忘れないようにしなければなりません。
2040年私達の梅山豚はどうなっているのでしょう?
持続可能な畜産でなければ存続は難しい、植物肉と培養肉との戦いが既に始まっているのです。
それはあっという間の出来事でした。
中国武漢に始まったウイルス感染は瞬く間にヨーロッパ、アジア、アメリカ他全世界に拡散し、グローバル社会の危険な側面を露呈させました。
いま生きている人類が経験した事の無いパンデミックは、スペイン風邪以来実に100年ぶりの事であり、既に世界で1億3000万人以上が感染し、300万人以上が犠牲になっています。
日本では2020年4月から5月にかけて第一回緊急事態宣言が発出され、その後第3波の影響で2021年1月から3月にかけて第二回緊急事態宣言が出されました。
社会経済活動を止める鎖国さながらの状況となり、これまでと一変した生活に人々は戸惑いを隠せないでいます。
ワクチンが接種され集団免疫を獲得するまではこの状況が続くと予想されます。
私達も販売先のレストランの休業により大きな影響を受けています。
そもそも梅山豚は売り先を求め続けた歴史でもあり、まだ売れていなかった時代には市場に出荷していました。
梅山豚は育てるのが難しく肉量の少ないコストのかかる豚がですが、市場は三元豚の規格で格付されるため「上物」になる事は無く、「規格外」として大幅な安値で取引されていました。
そこで自ら販路を開拓してきました。
梅山豚倶楽部の皆様を皮切りに、百貨店やレストランなどへ販路を拡げてきました。
特に近年はレストランへの販売に注力して来たわけですが、コロナにより梅山豚は多くの売り先を失うことになりました。
止む無く再び市場に出荷する事にしましたがやはり「規格外」と格付されて、また以前のような状況になってしまうのかと不安がよぎります。
しかし悲観してばかりはいられません。
これまでしてきたように愚直に生産に励み、一人一人、一軒一軒直接ファンを探して届けて行きます。
コロナの時代はそうした私達の原点を見つめなおす機会になっています。
ファンが無ければ成り立たない、ファンと共に歩むのが梅山豚なのです。
おりしも豚では「豚熱」というウイルスが野生のイノシシに感染し、次々と感染地域を広げています。
野生のイノシシからの感染を防ぐための試行錯誤の日々が続いています。
人間も豚も、ウイルスといかに共生して行くのかが問われる難しい時代に入ったと言えます。
いつかは梅山豚のレストランを開きたいという想いを永年抱いて来ました。
直営のつかはら肉店はメンチカツのテイクアウト店として開店しましたが、イベント的にレストランを営業してみたいという考えもあり、実は飲食業許可も取得していました。
開店1年を経たところで、いよいよいくつかイベントを行うことにしました。
まず最初のクラフトビールの会は地元のさかい河岸ブルワリーさんを招いて行いました。
道の駅さかいにできたビール工房では、IPAやペールエールなどの他に地元さしま茶を使ったさしま茶エールも人気で、飲み比べをしながら楽しみました。
さらに日本酒の会では地元の酒蔵、萩原酒造の若き杜氏萩原専務を招いて行いました。
彼が醸した様々な日本酒の語りを聞きながらいただく梅山豚料理はいっそう美味しいものでした。
その他焼酎の会、ウイスキーの会、ワインの会とお酒を決めてそれに合う梅山豚料理を創作しゲストに楽しんでいただきました。
酒と梅山豚の共演は口コミであっという間に席が埋まり毎回大盛況となりました。
そんな中、取引先のある東京の若手シェフが独立するため店を閉店すると聞きました。
「今しかない!」ゲストシェフとしてつかはら肉店に招いて応援したいという思いで申し出ると、シェフは快くゲストシェフを引き受けてくれました。
シェフの名は横田悠一、パリの星付きレストランPAGESでスーシェフを務め、日本に戻ってからは梅山豚を気に入って料理に使ってくれていました。
ディナーとランチをそれぞれ8席準備しましたが、東京に行かないと食べられないようなフランス料理を地元で食べられるとあって案の定予約はあっという間に埋まりました。
パリを感じる特別な一皿一皿に、自然と皆さんの笑顔が弾けました。
そしてメイン料理はもちろん梅山豚、炭火で時間をかけて丁寧に火入れされたローストは、肉汁が溢れ出しとろけるような脂身で、横田シェフも自画自賛する出来栄えだったようです。
やりたかった事の一つがまた叶いました。
常設ではないけれどゲストシェフを招いてレストランができました。
プロが作る渾身の梅山豚料理を是非地元の方々にも味わっていただきたい。
いつかはレストランをという夢が広がる肉店のイベントはこれからも継続して行こうと考えていた矢先、思いがけない嵐に飲み込まれていくのです。
日本の農業は外国人抜きには語れない、と言われています。
朝採れ野菜も、果物も、牛乳も、そして豚肉ももちろん多くの日本農業の現場は外国人技能実習生に支えられています。
塚原ファームでも以前から外国人技能実習生について検討してきました。
しかし、言葉が通じないことから様々な仕事がすぐ覚えられるのか?仕事が嫌になって脱走したりして企業責任を問われないのか?当たり外れがあると言われるが、働かない実習生だったら3年間も我慢できるのか?等々躊躇する理由は数多くありました。
しかし、社長が2度目の入院をした頃から、新たに採用する日本人社員は定着せず、ベテラン社員まで次々に退職する事になり、遂に農場は社長とパートタイム社員の2名となりました。
ここまで来たら外国人技能実習生を迎え入れてみようと考えました。
どこの国からの実習生にしようか?男性と女性はどちらがいいのか?社内で検討を進め、結論としてはタイ人の女性を仲介会社に申込ました。
それから4か月後の2019年11月末、運良くトントン拍子で実習生のカンジャナ(通称ワンちゃん)が入社してきました。
スラっとした2児の母でもある彼女は31歳、少しシャイな性格でしたが真面目で勤勉でした。
知り合いのいない日本に一人ぼっちで移り住み、初めての養豚という仕事に就いたワンちゃんは良く働きます。
一日も休まず、遅刻も早退もせず、寒い日も暑い日も文句ひとつ言うことなく頑張ります。
6か月が過ぎ、1年が過ぎ、どんどん日本語も覚え話せるようになって来ました。
すると、彼女の梅山豚への気配りと気付き、毎日毎日の変わらぬ落ち着いた働きぶりに感心するようになりました。
どうしてもっと早く申し込まなかったのかと思うほどです。
今は主に母豚の世話をしていますが、女性として母としての気配りがとてもよく、今では欠かせない戦力になっています。
当初不安に思っていた日本語が話せるか話せないかは結局大きな問題ではありませんでした。
優秀な人材を広く採用する事が大切だと改めて実感した今、新たにもう1名を迎え入れる決心をするのです。
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