養豚では数字が大切と言われます。
豚は交配後114日後に赤ちゃんが産まれ、産まれるとおよそ1ヶ月おっぱいを飲ませ離乳します。
離乳した母豚は、およそ8日で雄と再び交配します。
これらの合計152日は、年365日に換算すると2.4、つまり年2.4回出産ができるなどと計算します。
雄と交配をしても妊娠に至らない場合は、21日後に再度雄と交配します。
その場合、合計は173日に増え、出産は年2.1回に下がってしまいます。
もし再度妊娠に至らない場合は、年1.88回出産となります。
年間の出産回数が少なくなっても、餌や管理する人件費など諸費用が同様にかかるため、経営的には悪くなっていくのです。
また、飼料要求率という言葉もよく使われます。
これは、体重を1kg増加させるのに食べさせた餌の量を表します。
要求率3.5kgとか3.3kgなど、当然少ない方が効率的ということになります。産まれてきた子豚全てが同じ期間で育てられるわけではありません。
春と秋は食欲旺盛で肥育期間が短くなり、夏は暑いため食欲が減退し肥育期間は長くなります。
風邪をこじらせて肺炎になったり、最悪の場合死亡したり、農場の管理が悪くても肥育期間が長くなり、飼料要求率も悪くなっていきます。
養豚は、出産数目標年2.4回、飼料要求率目標3.3kgを達成しないと経営が成り立たないなどと言われ、日本中の養豚家はその数字の達成に必死になっています。
永遠に続く数字とのにらめっこ、養豚経営は数学でもあります。
最近は6次産業化が推奨され、育てるだけの養豚では成り立たないとも言われています。
生産から加工、販売まで様々な数字に根気よく立ち向かい、より正確な予測を基に生産や販売を行っていく時代になっています。
しかし、私達が取り組んでいるのは梅山豚、日本におよそ100頭しか原種豚がなく、そのほとんどが塚原牧にいます。
私達は唯一の梅山豚牧場として「種の保存」に取り組んでいます。
種の保存に重要なのは“ばらつき”です。
数字上の成績でのみ母豚を揃える事は、ある種の偏りが生じて近親交配による弊害もおきやすくなります。
また、飼料要求率についても目標管理をしていません。
通常の豚の1.5倍の9ヶ月という日数をかけて育てることが、梅山豚の独特の“歯応えがあるけどジューシー”という美味しさを引き出しているからです。
梅山豚に取り組んでいる私達は、生産効率を重視したこれまでの養豚の指標から、種の保存や、肉質を重視した梅山豚独自の指標を考えていかなければならないと考えています。