99.働き方改革と職人技 |
2019年4月より順次施行となる働き方改革法、その中で企業が優先的に対応すべき項目として、(1)有給休暇を5日以上取得できる体制の整備、(2)労働時間把握義務への対応があります。しかしながら問題点も指摘されています。
【残業代ゼロの衝撃】
働き盛りの40歳台50歳代では、残業代が入ることを常識として住宅ローンを組んでいる人が多くいます。しかし、残業代が急にゼロになったり急減したりすると、組んでいた住宅ローンが支払えなくなり、最終的には持ち家を売却して賃貸に移る人など、人生設計まで大きく変化してしまう事にもなっています。また、残業できないため家でこっそりたまった仕事をする人も増えているようで、新たな問題も発生しています。
【職人は育つのか】
働いた分だけ技術が蓄積する仕事、例えば料理人や寿司職人、鰻職人、陶芸家、大工、そして農家もそうです。「量が質を生む」の言葉の通りで、一人前になるまで何年もかかる職業があります。いわゆる職人です。養豚も繁殖~分娩~離乳~肥育と一通り覚えるまでに最低3年はかかります。早く一人前になろうとするには、人一倍努力をしなければなりません。つまり時間が必要になるのです。また、職人の仕事にはゴールがありません。何年も何十年もかかって一流と言われる職人になります。自分と向き合いながら、その技を磨き続けるのも果てしない時間のかかる作業です。
【日本での評価】
そんな何年もかかる職人技ですが、一般的にはあまり評価されないことが多いと感じます。一握りの職人しか食べていけない業界も多々あるようです。日本ではデフレ経済が長引き、お金に余裕のある人が少なくなりました。職人技への評価が高くないことは、その業界を目指す若者も増えません。
【外国人からの評価】
一方で外国人観光客のこうした職人技への評価は年々高まっています。小豆島にて木桶でつくる2年熟成の醤油蔵に観光客が大勢押しかけ、比較的高価な醤油から売れているようです。東京の高級寿司店や鰻店にも外国人が増えています。彼らは職人の技術や伝統を認めてその対価を支払っています。逆に日本人がその技術や伝統に無頓着なのを残念に思ったりします。
【根気との勝負】
長い年月の修業は技術の鍛錬もありますが、心の鍛錬でもあります。技術が習得できずくじけそうになったり、日々同じことの繰り返しにモチベーションを維持し続けるのも難しい時もあります。しかし、いつの日かその職人技が評価される日を夢見て修行を続けるのです。そんな根気の要る作業を今どきの若者がやりたいと思うのか?スマホで検索してすぐ答えが出る、苦労しなくても明日欲しいものが届く、最短ルートで目的地に向かえるなど、根気の要る作業が少なくなった現在だからこそ、そこにチャレンジする若者をしっかりと支え、継続できる環境を整え、日本の伝統や文化を守りたいと思っています。
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