これを書いているその日は私の誕生日でした。
8時の朝礼に向かう私に分娩担当の山本君が「出産中の母豚が動きません」と走ってきました。
急いで駆けつけると呼吸が止まっているがまだ温かい。
「帝王切開するぞ」という私の声に朝の現場には緊張が走りました。
「急いで」と思う心と、「でも慌てるな」と自分に言い聞かせ、帝王切開を開始しました。
溢れる血液や体液からようやく子宮を探し出し1頭、2頭・・・・6頭と赤ちゃんを取り上げました。
しかし、温かいその赤ちゃんは息をしていません。ゆすったり軽くたたいたり・・・でも命は戻りませんでした。
振り返ると傍らには無事産まれた子豚が7頭、息絶えた母豚に寂しそうにくっついて震えています。
少し前まで出産をしていた母豚の不幸は、出産の大変さを物語っています。
7月後半に交配を行い、猛暑に耐え、114日かけてようやく出産にこぎつけたのに、残りの6頭を出産できなかった事は母豚にとってきっと残念だったことでしょう。
何か変化に気付いてあげられなかったか?もう少し発見が早く、もう少し帝王切開が早ければ・・・・
1分、1秒を争いながら、6頭の命を救えなかった事の後悔、誕生日の朝に起きた残念な現実に重い気持になりました。
牧場ではこうしたドラマの連続です。若いスタッフが現実に向き合いながら、いのちをあずかる事に懸命になっています。
皆さんに少しでも知っていただければ嬉しいと思っています。